1.食品安全法規制
一律基準
人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める量。0.01ppm。
ポジティブリスト制度
2003年の食品衛生法改正に基づき、食品中に残留する農薬、飼料添加物及び動物用医薬品(農薬等)について、一定の量を超えて農薬等が残留する食品の販売等を原則禁止する制度。
命令検査(検査命令)
輸入時の自主検査やモニタリング検査、国内流通段階での収去検査等において違反が判明するなど、法違反の可能性が高いと見込まれる食品等について、輸入者に対し、輸入の都度、検査実施を命じる制度。
モニタリング検査
食品衛生法違反の可能性が低い食品等について、品目毎の年間輸入量及び過去の違反実績を勘案した年間計画に基づき、厚生労働省検疫所において実施される検査。
モニタリング検査で食品衛生法違反が発見された場合は、検査率を高めたり、検査命令の対象とするなど、検査が強化される。
2.分析
GC
ガスクロマトグラフ(Gas Chromatograph)は、ガスクロマトグラフィーを行う分析装置。分析対象物質に応じて、検出器や質量分析計を使用する。
主な検出器:
・水素炎イオン化検出器 FID(Flame Ionization Detector)
・電子捕獲型検出器 ECD(Electron Capture Detector)
・フレーム光度型検出器 FPD(Flame Photometric Detector)
・質量分析計 MS(Mass Spectrometer)
HPLC
高速液体クロマトグラフ(High Performance Liquid Chromatography)の略。LCとも略される。高速化にともない、UHPLC、UPLC等も使用される。
主な検出器:
・紫外検出器 UV(Ultra Violet)
・蛍光検出器 FL(Fluorescence)
・質量分析計 MS(Mass Spectrometer)
ICP
高周波誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、ICP)を光源とする分析法。ICP発光分光分析。装置は、ICP発光分光分析装置 (Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectrometer; ICP-OES)。
試料溶液を霧状にしてアルゴンプラズマに導入し、試料中の元素が励起状態となり、基底状態に戻る際に放出される光を分光して、波長から元素の定性、強度から定量を行う。装置へ導入は希酸水溶液のため、固体試料は前処理より溶液化した後に導入する。
MS
Mass Spectrometer(質量分析計)の略。
試料を、イオン源で原子や分子をイオン化し、高真空に保たれた質量分離部(四重極など)において、高電圧をかけることで、イオン化された成分が質量ごとに分けられ検出される(Mass Spectrum、マススペクトル)。
MS/MS
質量分析計(MS)が2台直列に結合され(タンデム質量分析計)、その間に衝突活性化室(コリジョンセル)を有する分析装置、またはそれを用いた質量分析法。
ppb(parts per billion)
主に濃度を表すための単位。
parts-per表記で、10億分の1。μg/kg、μg/Lに相当。
ppm(parts per million)
主に濃度を表すための単位。
parts-per表記で、100万分の1。mg/kg、mg/Lに相当。
UV-Vis分光
紫外可視分光光度法(Ultraviolet-Visible Absorption Spectroscopy):紫外から可視領域までの光を試料に照射すると、通過する光の一部が吸収される。光るが物質を通過する前後での差(吸光度)と照射した光の波長を検出し、スペクトルを測定する方法。装置は、紫外可視分光光度計(Ultra Violet-Visible Spectrophotometer; UV-Vis)。
異性体
分子式は同じで、化学構造が異なる化合物のことで、それぞれ異なる性質を示す。
構造異性体:分子式が同じで、構造式が異なるもの。
立体異性体:構造式が同じで、分子の立体的な構造が異なるもの。幾何異性体(シス・トランス異性体)と光学異性体(鏡像異性体)。
エライザ法 ELISA
ELISAは、抗体を使った免疫学的測定法(イムノアッセイ,Immunoassay)のひとつで、酵素標識免疫測定法(Enzyme-Linked Immuno-Sorbent Assay; ELISA)のこと。
生体試料中には様々なタンパク質が存在し、タンパク質中には抗原という免疫反応を引き起こす物質が入っている。検出対象の抗原に対する抗体に酵素を標識(結合)しておくと、抗原が抗体と結合した場合(抗原抗体反応)、その酵素により発色基質が発色する。この溶液の吸光度を測定することで、試料中に含まれる特定のタンパク質を検出、定量する。
感度
ある量の測定において、検出下限で表した分析方法または機器の性能。一般には、検量線の傾きによって決定される。
クロマト
クロマトグラフィー(Chromatography):吸着剤(固定相)中に、試料(移動相)を通過させ、試料中の成分を分離、検出、定量等を行う方法。移動相が液体の場合、液体クロマトグラフィー、気体の場合、ガスクロマトグラフィーという。
クロマトグラフ(Chromatograph):クロマトグラフィーを行う分析装置。
クロマトグラム(Chromatogram):クロマトグラフィーで得られた結果(記録、図等)。
原子吸光
原子吸光法 (Atomic Absorption Spectrometry; AAS) :試料溶液を高温中(アセチレン/空気炎中や黒鉛炉中)に噴霧すると目的の元素が原子化し、これにその元素特有の波長の光を透過させ、吸収スペクトル(吸光度)を測定することで、試料中の元素の同定および定量を行う方法。装置は、原子吸光光度計(Atomic Absorption Spectrometer; AAS) 。
フレーム(化学炎)の中で、原子化させるフレーム法と化学炎を用いないで原子化するフレームレス法(FL-AAS)がある。フレームレス法の代表的なものに黒鉛(グラファイト)炉内で電気的な加熱により原子化するファーネス法がある。
検出限界(LOD:limit of detection)
分析化学においては、検出下限のことを指すことが多い。ある分析方法によって検出できる、物質の最小の量または濃度。
一般的な定量分析では、S(シグナル)/N(ノイズ)比=3とされる。
定量限界(LOQ:limit of quantitation)
定量限界には、定量上限値と定量下限値があるが、ここでは定量下限値について解説。
定量下限値とは、その分析法で正確に定量できる最低濃度のことで、一般的な定量分析では、S(シグナル)/N(ノイズ)比=10とされている。
精度管理(QC:Quality Control)
検査機関における検査精度を担保するために行われる管理手法、仕組みのこと。
組織内部で行う内部精度管理と、第三者が行う外部精度管理がある。
代謝物
生物の代謝の過程で生成される中間生産物や最終生産物。
ラボ
ラボラトリー(Laboratory)の略。研究所や実験室のこと。
3.農薬と動物用医薬品
農薬
農作物の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤及び農作物等の生理機能の増進または抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤。
分類方法は以下の通り:
・機能別:殺菌剤、殺虫剤、除草剤、植物成長調整剤など
・製剤別:乳剤、水和剤、錠剤、燻蒸剤など
・系統別:有機塩素系、有機リン系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系など
抗生物質と合成抗菌剤
抗生物質:カビや放線菌などの微生物によって作られ、細菌などの他の微生物の成長を阻害する物質のこと。アオカビから発見されたペニシリンなど。
合成抗菌剤(抗菌剤、抗菌薬):化学的に合成され、細菌死滅させたり、増殖を抑制したりする抗菌作用のある化合物。サルファ剤、オキソリン酸など。
なお、現在、抗生物質の多くが化学合成されていることもあり、抗生物質も含めて、抗菌剤、抗菌性物質と称されることがある。
動物用医薬品
ペットや家畜等を病気や寄生虫などから守るために使用される医薬品。
動物用に使用される医薬品(抗生物質や合成抗菌剤)のこと。
ドリフト
散布された農薬が目的外の作物に付着してしまう農薬の飛散のこと。
ポストハーベスト(Postharvest)
Postは「後で」、harvestは収穫の意味。収穫後の農産物に、使用される農薬。
日本では、ポストハーベスト農薬としてではなく、食品添加物(防かび剤)として、指定されている農薬がある。イマザリル、チアベンダゾール、アゾキシストロビンなど。
有機塩素系農薬
分子内に塩素原子(Cl)を含む農薬。
過去に殺虫剤として使用されたが、一部発展途上国を除き、世界的に禁止されつつあるものが多い。BHC、DDT、ディルドリン、ヘプタクロル、エンドスルファン、クロルデンなど。
有機リン系農薬
分子内にリン元素(P)を含む農薬。有機塩素系農薬が禁止されるにともない、比較的分解しやすい有機リン系農薬が、主に殺虫剤として使用されるようになった。パラチオンなどの農薬中毒を発症する毒性の高い有機リン剤は禁止され、低毒性の有機リン剤に置き換わりつつある。パラチオン、メチルパラチオン、メタミドホス※1、アセフェート、ジクロルボス、クロルピリホス※2、ホキシムなど。
※1メタミドホス(Methamidophos)
有機リン系化合物。
海外では殺虫剤として使用される。日本での農薬登録は無く、使用は禁止されている。中国では、2007年以降、使用が禁止されているが、2007年12月下旬から2008年にかけて、中国産冷凍餃子に混入されていたことで大きな社会問題となった。登録農薬のアセフェートの加水分解で生成する。
※2クロルピリホス(Chlorpyrifos)
有機リン系殺虫剤。
アセチルコリンエステラーゼの阻害により、殺虫作用を示す。2000年~2002年にかけて中国産冷凍ほうれん草の基準値超過で大きな問題となり、一時、輸入停止措置まで至った。
ネオニコチノイド系農薬
ニコチンに似た成分(ネオニコチノイド)をベースとする殺虫剤。
1990年代に登場し、 人畜より昆虫に対して選択的に強い神経毒性を持つため、ヒトへの毒性の高い有機リン系の農薬に代わる効率的な殺虫剤として、2000年代から幅広く使用されるようになっている。日本で登録されている農薬は、イミダクロプリド、アセタミプリド、チアクロプリド、ニテンピラム、チアメトキサム、クロチアニジン、ジノテフランの7種類。
ピレスロイド系農薬
元々は、除虫菊に含まれる有効成分の総称で、除虫菊に含まれる有効成分は、ピレトリン I、II、シネリン I、II、ジャスモリン I、IIの6種類である。ピレスロイドはピレトリンに似た化合物という意味で、現在では合成ピレスロイドが主流となっている。多くの外注に対して有効で、低毒であることから、農業用から家庭用まで様々な殺虫剤として利用されている。アレスリン、シペルメトリン、シフルトリン、ペルトリン、エトフェンプロックスなど
ADI:Acceptable Daily Intake
ヒトがある物質を毎日一生涯にわたって摂取しても健康に悪影響がないと判断される量。
「一日当たりの体重1kgに対する量(mg/kg体重/日)」で表示される。
ARfD:Acute Reference Dose
ヒトの24時間又はそれより短時間の経口摂取で健康に悪影響を示さないと推定される体重1 kg当たりの摂取量のこと。
POPs:Persistent Organic Pollutants
難分解性、高蓄積性、長距離移動性、有害性を持ち、環境への影響が大きいとされる残留性有機汚染物質のこと。
「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)が2004年5月に発効し、POPs条約対象物質21物質が定められている。こののうち、9物質(アルドリン、クロルデン、ディルドリン、エンドリン、ヘプタクロル、DDT、BHC)が、過去に日本において農薬として使用実績がある。
4.食品添加物
食品添加物(Food additives)
保存料、甘味料、着色料、香料など、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されるもの。
指定添加物、既存添加物、天然香料、一般飲食添加物からなる。
指定添加物
食品衛生法第12条に基づき、厚生労働大臣が使用してよいと定めた食品添加物。
食品衛生法施行規則別表1に収載されている。この指定の対象には、化学的合成品だけでなく、天然物も含まれる。
既存添加物
日本において広く使用されており、長い食経験がある天然添加物は、使用、販売等が認められており、既存添加物名簿に収載されているもの。
天然香料
動植物から得られる天然の物質で、食品に香りを付ける目的で使用されるもの(バニラ香料、カニ香料など)。
一般飲食添加物
一般に飲食に供されているもので添加物として使用されるもの(イチゴジュース、寒天など)。
サイクラミン酸
甘味料。
日本では、1956年から使用が認められていたが、米国FDAにより発がん性や催奇形性の疑いが指摘されたため、1969年11月以降、使用が禁止されている。中国、EU諸国では使用が認められている。別名、チクロ。
二酸化硫黄(SO2、sulfur dioxide)
漂白剤、保存料、酸化防止剤。
食品添加物として広く使用されるほか、天然由来でも検出されることがある。
亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム)として使用基準があり、二酸化硫黄としての基準値があり、検査対象とされる。
BHA(ブチルヒドロキシアニソール、Butylated hydroxyanisole)
酸化防止剤。
油脂、バター、魚介乾製品、魚介塩蔵品、乾燥裏ごしいも、魚介冷凍品、鯨肉冷凍品などに使用される。
BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン、butylated hydroxytoluene)
酸化防止剤。
油脂、バター、魚介乾製品、魚介塩蔵品、乾燥裏ごしいも、魚介冷凍品、鯨肉冷凍品、チューインガムに使用される。BHAなど他の酸化防止剤と併用されることが多い。
TBHQ(tert-ブチルヒドロキノン)
酸化防止剤。
日本では食品添加物として認められていない指定外添加物であり、これを含む食品の輸入・販売等も認められていない。米国や中国等の諸外国では使用が認められている。
5.微生物及び食品衛生指標
微生物(Microorganism)
肉眼で見ることのできないほどの小さな生物をまとめて称したもの。
細菌、酵母、ウイルス、原生動物など。食品衛生分野では、衛生指標菌として菌が定められている他、病原性微生物が重要な要素となる。
CFU(Colony forming unit)
寒天平板法により生菌数を計測する際に、平板に形成されたコロニー数を表す単位。
コロニー(Colony)
食品検体の試料原液や微生物培養菌液を希釈して、寒天平板上に塗抹培養すると、それぞれの細胞は分裂を繰り返して、肉眼で観察できる独立した集団(塊)を形成する。これをコロニーという。
最確数(MPN:Most probable number method)法
食品に含まれる対象微生物が低濃度に存在する場合に用いられる確率論に基づいた微生物濃度の推定方法。
MPN法では寒天培地を用いた通常のコロニー計数法よりも低濃度の微生物が測定できる。
衛生指標菌(汚染指標菌)
食品や調理器具、手指などの微生物の汚染や衛生管理の状況を客観的に評価するために指標となる菌。
一般生菌数、大腸菌群、大腸菌など。これらの菌を調べることにより、汚染の度合いや病原菌の有無を推測することができる。
一般生菌数
標準寒天培地を用いて、好気的な条件下で35℃前後の培養で発育した中温性好気性菌数のことで、食品の微生物汚染の程度を示す代表的な指標。
大腸菌群(Coliform group)
48時間以内に乳糖を分解して酸とガスを産生するグラム陰性の通性嫌気性桿菌群。
大腸菌群の名称は、食品衛生の領域で使用され、「食品、添加物等の規格基準」の成分規格等で、規格基準が定められている。
糞便系大腸菌群(Fecal coliforms)
大腸菌群のうち、44.5℃で発育して乳糖を分解してガスを産生する菌群のこと。
食品衛生分野では、E.coliと称する。
大腸菌(Escherichia coli)
グラム陰性の通性嫌気性桿菌に属し、環境中に存在する。Escherichia coliは、E.coli(斜体)と略するが、食品衛生分野でのE.coliは、糞便系大腸菌群を指し、大腸菌と同義ではない。ほとんどの大腸菌は無害であるが、大腸菌の中でも強い病原性を示すものは、病原大腸菌(病原性大腸菌)と呼ばれる。O-157など。
サルモネラ属菌(Salmonella spp.)
腸内細菌科に属する通性嫌気性グラム陰性桿菌であり、菌体の周囲に周毛性鞭毛を持つ細胞内寄生菌である。
動物の腸管、河川、下水など自然界に広く分布する細菌で、血清型から2500種類以上に分類されている。人から分離されるサルモネラのほとんどはSalmonella enterica subsp. enterica。生肉、特に鶏肉と卵を汚染することが多い。
リステリア・モノサイトゲノス(Listeria monocytogenes)
リステリア属8菌種のうち、食中毒を起こすのがリステリア・モノサイトゲノスである。
リステリア・モノサイトゲネスは広範囲の家畜や家禽、野生動物、魚類等様々な動物や河川水や下水、飼料などの環境のあらゆるところに存在する。したがって、様々な食品が汚染される可能性があるが、特に乳、食肉などの動物性食品の危険性が高いといわれている。
水分活性(Water Activity、Aw)
食品中の自由水の割合を表す数値。食品中に存在する水は、自由水と結合水に分けることができる。自由水は、食品内の分子、粒子が自由に運動することができる水で、微生物が増殖に利用できる。結合水は、食品中のある成分と結びつき、分子や粒子の運動が抑制され、微生物が増殖に利用することができない。食塩や糖分を加えると、結合水の割合が増え、食品の保存性が高まる。
揮発性塩基性窒素(VBN、Volatile basic nitrogen)
たんぱく質の分解によって生じるアンモニアやアミン類のことで、肉や魚の腐敗の指標。魚肉の鮮度低下にともなって、細菌や酵素の作用により増加する。
6.カビ毒
カビ毒(Mycotoxin、マイコトキシン)
カビが産生する代謝産物のうちで、人や動物に対して有害な作用を示す化学物質のこと。
アフラトキシン(Aflatoxin)
アスペルギルス(Aspergillus属)等のかびが作り出す毒の一種。
食品での含有が問題となるのは、アフラトキシンB1、B2、G1、G2、M1、M2の6種類。これらのうち、アフラトキシン B1、B2、G1、G2の4種類が「総アフラトキシン」と定義されている。落花生、唐辛子、ハトムギなどでの検出が報告されている。アフラトキシンM1、M2はそれぞれアフラトキシンB1、B2を摂取した牛の乳中に代謝物として検出される。
オクラトキシン(Ochratoxin)
アスペルギルス・オクラセウス(Aspergillus ochraceus)あるいはペニシリウム・ビリディカータム(Penicillium viridicatum)に属する数種の菌によって産生されるかび毒。
名前は、産生菌のアスペルギルス・オクラセウスに由来している。菌によっては、オクラトキシンA(OTA)に加え、オクラトキシン B(OTB)を産生するものもある。食品汚染の報告が多いのは OTA であり、OTB が次に続くが、その他はほとんどみられず、また、毒性も OTA が最も強い。
パツリン(Patulin)
パツリンは、ペニシリウム属やアスペルギルス属等の真菌によって産生されるかび毒。
菌が付着して腐敗した果汁から検出され、特にりんご果汁でリスクが高いとされている。
7.国際規格、機関名など
AOAC:Association of Official Analytical Chemists
公認分析化学者協会。
1884年に米国で肥料検査法の統一に設立されたAssociation of Official Agricultural Chemistsが全身。現在は、AOAC Internationalと呼ばれる。AOAC公認法は、国際的に広く利用されている。
CAS登録番号:
世界的に利用されている、個々の化学物質に固有の識別番号。
米国化学会のCAS(Chemical Abstracts Service)が運営・管理する化学物質登録システムから付与される。
コーデックス(CODEX)
コーデックス委員会(Codex Alimentarius Commission (CAC))は、国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が1963年に設立した食品の国際基準(コーデックス基準)を作る政府間組織。正式にはコーデックス・アリメンタリウス(Codex Alimentarius)。ラテン語の食品規格という言葉に由来する。
EFSA: European Food Safety Authority
欧州食品安全機関(或いは欧州食品安全庁)。
2002年に設立され、イタリアに所在。食品の安全性について、専門家らが、食品や使用される農薬、添加物等に対するリスク評価を行い、欧州委員会などに科学的な助言を与える。
EPA:Environmental Protection Agency
米国環境保護庁。
米国の環境政策全般を担当する行政組織で、日本における環境省にあたる。食品安全については、農薬の安全性、残留基準、及び飲料水の安全基準を所管する。
FDA:Food and Drug Administration
米国食品医薬品庁。
米国の保健福祉省に属し、食品、医薬品を、化粧品などの許可や違反の取り締まりをする行政機関。食品行政を一元的に管理しているとされるが、食肉や卵などについては、農務省の所管となっている。
FSIS:Food Safety and Inspection Service
米国農務省食品安全検査局。
米国農務省(USDA)の部局で、食肉、食肉製品、加工卵などの安全行政を所管している。
米国で、食品安全を所管する行政機関は主に2つで、FSISは食肉、加工卵の安全性を、FDAはそれ以外の食品の安全性を所管している。
ISO:International Organization for Standardization
国際標準化機構。
スイス・ジュネーヴに本部を置く非政府組織。ISOという組織が定める「ISO規格」のことを「ISO」と称する。試験所の国際規格は、ISO/IEC 17025。
国立医薬品食品衛生研究所
英名NIHS:National Institute of Health Sciences。医薬品、食品、化学物質などについて、その品質、安全性、有効性を評価するための試験、研究、調査を行う国立の機関で、厚生労働省の所管。
国家市場監督管理総局
英名SAMR:State Administration for Market Regulation。工商行政管理総局、食品薬品監督管理総局(CFDA)などが再編されて、2018年に設立された中国の行政機関。現在、医薬品、化粧品は、国家薬品監督管理局(NMPA)が所管し、食品、健康食品等を国家市場監督管理総局(SAMR)が所管している。なお、~総局は中央であり、地方は~局という名称となっている。